LACS活用ガイドブック
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41使用後の感想・留意点 20世紀最高の物理学者は誰か? 物理学者のアンケートによると、ダントツはRichard Feymanですね。Feyman博士の講義は高く評価されていますが、アメリカトップレベルの学生対象の基礎物理の講義についてさえ、以下のようにコメントをしています。 『目の前で実験をして見せて質問したところ、誰も答えられなかったのに、専門用語を持ち出すと見事に答えられた。… コンピュータが正しいキーワードの時しか動作せず、同じ意味の違う言葉では反応しないのと同じだ。』 『テストを見事パスして、たくさんのことを「学んだ」ことになるわけだが、丸暗記した以外のことは、実は何も「知って」はいない。』 『教育とは、実はもう教育など受けなくてもいいと思いつつやってきた受講生に、いかにして教育が意味あることだと気づかせることに尽きる。』 また、孔子の以下の言葉が、論語・述而第七に記されています。 『… 憤りを発して食を忘れ、楽しみて以て憂いを忘れ、老いの将に至らんとす …』= 激しい感情を覚えるくらいの思いがあってこそ、本当の学びの喜びがある。 『子曰、不憤不啓、不悱不発。…』= 憤りを発するように学ばねば学問の道は開かれない。言いたいことが言えず、もどかしい思いをしてこそ言いたいことが言えるようになる。 いずれも卓見ですね。大学は、教員の研究が教育をリードする場です。よって、研究時間を削らないようにしながら、教育の質を、学生との相互作用を深めながら高めることが不可欠です。大学教育イノベーションセンターは教員の立場にも立ち、LACSがこうしたことに有意義なツールとしてもっと磨く必要があります。もちろん、学生が自ら実力を伸ばす機会が作れるよう、各教員の不断の努力も必要です。 ③ 出欠情報確認 出席は、出欠管理システムの「ICカードリーダ」を用い、学生証を翳して記録します。しかし、自分の出席が正しく記録されているか、という質問が後を絶ちません。そのため、出欠管理システムからの出欠情報を、手作業で、すべてLACSに転写しなければなりません。とても大変な作業です。学生証を落として再発行中、自宅に忘れた、翳し忘れた、などいう申し出は毎回ですし、遅刻なのか欠席なのかの峻別も必要ですから、実に厄介です。 使用後の感想・留意点 戦前の横浜高等工業学校(現在の横浜国立大学理工学部)の初代校長だった鈴木煙州(鈴木達治)先生の教育基本理念は、三無主義といわれます。つまり、無試験、無採点、無賞罰であり、個々の講義では、『出欠を取らない』、『試験をしない』、『評価をしない』ということです。学修意欲の源泉は、ただ『自覚』あるのみ、という思想です。最初は戸惑う新入生も、必死になって勉強し、活発な質問が続出する講義だったそうです。その成果は、第二次世界大戦後の京浜工業地帯を支え、スピード感と力量ある復興を成し遂げた多くの優秀な人材を輩出したことで実証されています。 この理想は、今も全く同じです。本当は、出欠管理システムが必要な状況こそが、あってはならないものだと思います。 LACS活用事例編

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