teachingtips2019
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27② 合理的配慮におけるシラバスの重要性■シラバスを書く際は、スケジュール、授業の方法、課題を出す時期、配点などを具体的に記載しておくことで、どんな学生にとっても、学びの計画を立てやすくすることができます。シラバスに授業の詳細が記載されていれば、授業を履修する前に学生がシラバスを見て、「この部分は私にとって困難になりそう?」と事前に検討することが可能になります。それによって、問題が生じる前に対処(予防)ができるようになります。生じ得る問題が事前に特定できれば事前に対処することも可能になりますので、費やされる時間と労力を節約することにもつながります。また、シラバスの中に、授業のスケジュールや授業方法、課題の回数や時期や配点などの具体的な記載がされていると、学習の見通しが立てやすくなり、心理的不安を取り除くこともできるでしょう。つまり、どうやって学んでいけるかを学生自身が自分で考え、計画することにもつながります。さらに、合理的配慮の可能性を念頭において授業設計をする場合、到達目標の表現にも工夫する必要があります。例えば、プレゼンテーションの課題を出す予定であっても、到達目標に「プレゼンテーションができる」という項目を設定してしまうと、合理的配慮の対象となる学生の中にはその課題をこなすことができず、到達目標を達成できない場合が考えられます。このようなケースでは、「考えたことを効果的に他者に伝えることができる」のような表現を用いて、方法を限定しない形で到達目標を設定することで、到達目標を変更することなく合理的配慮が必要な学生に対応可能となります。学生のアクティブラーニングを促そうと授業を設計するときに、それが合理的配慮と両立しないと感じる場合もあるかも知れません。しかしながら、学生が主体的に学び、理解を深め、知識・技能を修得していこうとするとき、その方法には様々な形があり得ます。グループディスカッションやプレゼンテーションはアクティブラーニング型の授業での活動としてわかりやすい例と言えますが、これらの活動がすなわちアクティブラーニングそのものであると考える誤解もあるかもしれません。ディスカッションは多角的に思考を深めたり妥当性の高い答えを導くことを目的とした活動であり、プレゼンテーションはまとまったことがらを口頭および資料を使って他者にわかりやすく伝えることを目的とした活動です。ものごとを批判的に検討したり、分析して解を導くという目的があればグループワークではなく、データを分析してレポートとしてまとめる活動によっても促すことができます。座学においても、ただ漫然と聴講するのではなく能動的に考えながら授業に参加させるために、発問を工夫したり、講義内にクイズを取り入れて学生の思考を外に表現させる機会をつくることもアクティブラーニングを促すことになります。このように授業に込められた様々な目的やねらいに応じて、その方法にもバリエーションがあることを考えると、合理的配慮が必要な学生に対しても、学び方を工夫して提案することで、目標達成の道を開くことができる可能性があります。すなわち、授業で取り組もうとしている活動や課題をできないからやらせないという対応ではなく、どんなやり方ならできて、目標となる力を養っていけるのかを学生と共に考え実践することで、学生の力を伸ばしていけるように導くということが合理的配慮とアクティブラーニングを両立することになります。

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